住宅選びの基準によく挙がっているのが、災害時の安全性だ。しかし、その多くは構造上の違いによる災害に強い・弱いといったもので、普段の生活の中に潜む安全性についてはあまりフォーカスされていない。
実際に高齢者の暮らしぶりを見ていると、さまざまなリスクと過信の怖さが浮上してくる。
そこで、人生100年時代に突入し、より長くなる「老後」の暮らしと高齢者にとっての安全な住まいについて考えてみよう。
年齢を重ねても住みやすい住まいを…。子どもが成長したり独立したりすると、住まいの選び方も変わってくる。高齢になったときの暮らしをイメージして決めたつもりでも、意外とその時がこないと見落としてしまうのが体力の低下だ。
高齢になって体力が落ちると、普段の生活にどのような変化が現れるのだろうか。
老後の住まいに平屋が向いているのは、特に説明する必要はないだろう。階段の上り下りが足腰の弱くなった高齢者に向いていないのは、言うまでもない。
ところが、子どもたちとの同居を予定していると自分たちは1階、子どもや孫の生活は2階・3階という具合に考える方は多い。世代ごとの住み分けは、生活パターンの違いへの配慮が感じられる点は悪くないだろう。
しかし、完全に分断した構造でなければ、掃除や洗濯などで上階へ出入りする機会は出てくる。年齢を重ねても「まだ大丈夫」「慣れている」という気持ちがあると、住まいの中のリスクは忘れてしまいがちだ。そして、うっかり階段を踏み外す事態に…。
可能性は高くなくても、やってくるのが「まさか」というものではないだろうか。体力に自信のある方ほど、加齢による体力や判断力の衰えに対して過信しがちだ。だからこそ、元気なうちに、できるだけ多くのリスクを回避しておきたい。その大きな一手として、高齢者の住まいに「平屋は最低条件」であると訴えたい。
平屋住宅を選んだとしても、高齢者ならではの問題がまだ存在する。
例えば、加齢による体力の衰えは、若い頃は何でもなかった動作を億劫で負担感のあるものへと変える。部屋と部屋を移動する際のドアの開閉に、来客を告げるインターホンの音や電話のベルへの応対。些細な行動でも、機敏に動けない自分にイライラしてしまう方もいるだろう。
普段の掃除や片づけ、荷物の移動など、そこにドアや壁が1枚あるだけで手間は増えて年齢を重ねた体には負担として圧し掛かる。若いうちはイメージしにくいが、「こんなことが」と思うようなことが難しくなるのだ。そして意外なことに、苦労を感じているはずの本人が「この程度」「そのくらいできる」と負担になっている点を軽視する傾向もある。体の衰えを認めたくない、自分はまだまだ若い、そんな思いが現状の改善を邪魔することさえあるのだ。
普段の生活の中の負担こそ、客観的に判断できるうちにしっかり準備しておきたい。「その時が来たら」では、自分にとって楽で暮らしやすい住まいが遠ざかってしまうかもしれないのだ。
「区切り」をなくすと暮らしはグッと楽になる
では、「普段の生活の中の負担」に配慮した平屋住宅とはどんなものだろうか。
ドアや壁に阻まれない「区切りのない家」だ。
ドアの開閉の面倒さがなく、荷物を運ぶのも楽。玄関でちょっと声を出せば家族の助けもすぐだ。来客にすぐ対応できなくても、なんとなくお互いの様子がわかる。インターホン越しでは得られないメリットだろう。スマートフォンがなっていても、区切りがなければ見つけやすいはずだ。
また、掃除しやすい住まいは、体力が低下しても清潔な生活環境の持続性を高める。お掃除ロボットを活用するにしても、他の部屋へと移動する必要がないため、スイッチ1つで住まい全体をきれいに保てるのだ。
区切りのない家というと、冷暖房の効率を心配する方が多いが、最初から「区切りのない家」を想定していれば、それに合った効率のよさを求めることができる。なにより、高齢者にリスクの高いヒートショックを回避できる点は大きいだろう。
区切りのない家は、高齢者にとって暮らしやすさだけでなく、健康寿命を延ばす理想的な環境ともいえるのかもしれない。
「区切りのない家」は、「見通しのいい家」と言い換えることもできる。この見通しのよさは、年齢を重ねていく中で起こりうる孤独感の解消に役立つだろう。
老後も明るく楽しい毎日を過ごしたい…。そんな思いを叶えるヒントがここにある。
年齢を重ねる中で生じる体の変化は、体力だけではない。物が見えづらく、耳は遠くなるものだ。周囲の人と同じように話していても、聞こえにくいために理解が及ばず疎外感を覚えたり、同じものを同じように捉えることができなかったり…。そんな積み重ねは、高齢者の心に孤独感を生むことがある。
居心地のいいはずの我が家も、ドアや壁の仕切りがあると声の通りが悪く、得られる情報が少なくなるものだ。その結果、家族と同居していても、孤独を感じる瞬間があるという。さらに体力の低下もあれば、人に会ったり出かけたりするのも億劫になり、気持ちが塞ぎ込んでしまう方も少なくない。
高齢者の住まいは、心の健康にも配慮したものであって欲しい。悠々自適とまではいかなくても、老後で苦労しないためにそれまで頑張ってきたのだから。
区切りのない家は、心の健康面にも多くのメリットがある。
・耳が遠くなっても広い視界で情報を入手しやすい
・リビングから玄関までがつながっていて人との接触が増える
・寝起きが大変になっても近所付き合いを継続しやすい
目や耳が遠くなっても、視界が広ければ家族や来客の顔を見る機会が増えて疎外感は薄れるだろう。家族が対応している来客とも一緒に話したり、その様子を共有したりもできる。ベッドから寝起きするのが難しい体調の日も、声のよく通る区切りのない家ならば、声だけで見舞うこともできるのだ。
一般的な構造の平屋では、そうはいかない。見舞いをするには上がり込まないと難しい。上がり込むとなると手ぶらという訳にはいかないし、5分でさっと帰るのも気が引けだろう。気心知れた相手であっても、遠慮して足が遠のく可能性を否定できないのだ。
区切りをなくして心もオープンに
高齢者の住まいは、区切りのないオープンな空間にすると居心地のよさが格段に上がるのではないだろうか。昨今、近所の人でも「ちょっと上がっていかない?」と声をかけにくい。その点、区切りのない家は、玄関先に腰かけてもらっても十分な距離を保てる。土間などあれば最高だ。さらに立ち寄りやすい家になるだろう。
夫婦どちらかが寝たきりになっても、疎外感が少ない点も注目したい。風邪などで数日寝込むのとは違い、寝たきりという状態は心にも大きな影を落とす。テレビなどで気を紛らわすことはできても、やはり部屋に一人きりの時間が増えるのは寂しいだろう。区切りのない家は、そんな高齢者ならではの寂しさを解消できる点でもおすすめだ。
老後の暮らしでは、介護のあり方についても考えておきたい。中でも、高齢者による高齢者の介護は、超高齢化社会の大きな課題の1つだ。
区切りのない住まいは互いの様子が把握しやすく、お世話の中で生じる手間やストレスの軽減も期待できる。閉鎖的になりがちな住居の中では、視線が通りやすくなることで、場合によっては、地域住民や行政からの助けも得られるかもしれない。
真面目で一生懸命に頑張る人ほど、悩みを抱え込んでしまうという。誰かに気付いてもらえる環境をつくる…。それは、未来の自分たちを助けることになるのかもしれない。
ここまで高齢者の生活の中に潜む、体と心を害するリスクについてフォーカスしてきたが、災害時ももちろん大きなリスクが生じる。スムーズな避難が可能であるかという問題だ。
普段から防災の備えはあっても、いざとなると思うように行動できないものだ。ならば「最悪は体一つで逃げ出せばいい」そう若いうちは思っていても、高齢になると思わぬ事態が生じる。
残念なことに、避難の遅れが原因と思われる形で亡くなられる方がいる。災害の危険な兆候はその前からあっても、速やかに避難するという選択ができなかったケースだ。
住まいの中にいると、漠然とした安心感がある。近年、自然災害の規模が大きくなっているが、不安感から外へ逃げ出すのを躊躇することもあるだろう。中でも高齢者場合は、避難場所での生活の不安も大きい。病や体調の不安を抱えている方はその傾向が強いだろう。
さらに、長年住んでいる家への愛着も避難を遅らせるという。周囲の声掛けなどでやっと避難を決断しても、若い世代と違いサッと飛び出すことなんてできない。そんな時に生死を分けるのが、住まいが避難しやすい環境であるかどうかだ。
避難しやすい環境は、日頃から整えられていなければ意味がない。まずは、そのための条件を考えてみよう。
・各個室のドアが開かなくなるといったリスクがない
・住宅内の異変に早く気付ける
・真夜中でも外まで移動しやすい動線
・家族の居場所、安否が瞬時に確認できる
大地震では、ドアが歪んで開きにくくなることがある。若ければ勢いでどうにかできるかもしれないが、高齢になると難しい。玄関なら外に助けを求めることができても、奥の部屋では困難だ。
住宅内の火災であれば、異変に早く気付くことが命をつなぐ可能性は高い。避難の動線がシンプルにで、同居の家族の居場所や安否の確認が瞬時にできれば。それだけ避難が早くなる。
これらの条件を検討すると、やはり平屋で区切りのない家が理想的といえるだろう。
高齢になると自力での避難が難しいケースも出てくる。そんな時、行政や地域の方の助けを借りることとなる。その際も、やはり避難しやすい環境は重要だ。
設備が十分な団体に避難救助をしてもらう場合は、担架で運び出すこともあるだろう。区切りのない平屋であれば、ドアや通路の狭さがネックになる心配はいらない。医療機器の持ち出しが必要でも、比較的スムーズに進めることができるはずだ。
大きな災害の中での救助活動でも、区切りのない家は迅速な活動の助けになる。毎年のように想定を超える自然災害に見舞われるようになった今、「まさか」のできごとは決して他人ごとではない。最悪のケースに備えることが、自分と家族の笑顔を守ることにつながるのだ。
誰もがいつか迎える老後の暮らし。そこからはじまる第二の人生が、それこそ本番とばかりに長くなっていく時代に突入した。
しかし、私たちはまだ暮らしの中のリスクに対して十分な備えができているとはいえないだろう。まずは、区切りのない平屋から。
早めに備えておけば、それだけ長く楽しい人生を謳歌できるのではないだろうか。
住宅選びの基準によく挙がっているのが、災害時の安全性だ。しかし、その多くは構造上の違いによる災害に強い・弱いといったもので、普段の生活の中に潜む安全性についてはあまりフォーカスされていない。
実際に高齢者の暮らしぶりを見ていると、さまざまなリスクと過信の怖さが浮上してくる。
そこで、人生100年時代に突入し、より長くなる「老後」の暮らしと高齢者にとっての安全な住まいについて考えてみよう。
体力が低下しても暮らしやすい「区切りのない家」
年齢を重ねても住みやすい住まいを…。子どもが成長したり独立したりすると、住まいの選び方も変わってくる。高齢になったときの暮らしをイメージして決めたつもりでも、意外とその時がこないと見落としてしまうのが体力の低下だ。
高齢になって体力が落ちると、普段の生活にどのような変化が現れるのだろうか。
最低条件は平屋
老後の住まいに平屋が向いているのは、特に説明する必要はないだろう。階段の上り下りが足腰の弱くなった高齢者に向いていないのは、言うまでもない。
ところが、子どもたちとの同居を予定していると自分たちは1階、子どもや孫の生活は2階・3階という具合に考える方は多い。世代ごとの住み分けは、生活パターンの違いへの配慮が感じられる点は悪くないだろう。
しかし、完全に分断した構造でなければ、掃除や洗濯などで上階へ出入りする機会は出てくる。年齢を重ねても「まだ大丈夫」「慣れている」という気持ちがあると、住まいの中のリスクは忘れてしまいがちだ。そして、うっかり階段を踏み外す事態に…。
可能性は高くなくても、やってくるのが「まさか」というものではないだろうか。体力に自信のある方ほど、加齢による体力や判断力の衰えに対して過信しがちだ。だからこそ、元気なうちに、できるだけ多くのリスクを回避しておきたい。その大きな一手として、高齢者の住まいに「平屋は最低条件」であると訴えたい。
「何気ない毎日の負担」に配慮する
平屋住宅を選んだとしても、高齢者ならではの問題がまだ存在する。
例えば、加齢による体力の衰えは、若い頃は何でもなかった動作を億劫で負担感のあるものへと変える。部屋と部屋を移動する際のドアの開閉に、来客を告げるインターホンの音や電話のベルへの応対。些細な行動でも、機敏に動けない自分にイライラしてしまう方もいるだろう。
普段の掃除や片づけ、荷物の移動など、そこにドアや壁が1枚あるだけで手間は増えて年齢を重ねた体には負担として圧し掛かる。若いうちはイメージしにくいが、「こんなことが」と思うようなことが難しくなるのだ。そして意外なことに、苦労を感じているはずの本人が「この程度」「そのくらいできる」と負担になっている点を軽視する傾向もある。体の衰えを認めたくない、自分はまだまだ若い、そんな思いが現状の改善を邪魔することさえあるのだ。
普段の生活の中の負担こそ、客観的に判断できるうちにしっかり準備しておきたい。「その時が来たら」では、自分にとって楽で暮らしやすい住まいが遠ざかってしまうかもしれないのだ。
「区切り」をなくすと暮らしはグッと楽になる
では、「普段の生活の中の負担」に配慮した平屋住宅とはどんなものだろうか。
ドアや壁に阻まれない「区切りのない家」だ。
ドアの開閉の面倒さがなく、荷物を運ぶのも楽。玄関でちょっと声を出せば家族の助けもすぐだ。来客にすぐ対応できなくても、なんとなくお互いの様子がわかる。インターホン越しでは得られないメリットだろう。スマートフォンがなっていても、区切りがなければ見つけやすいはずだ。
また、掃除しやすい住まいは、体力が低下しても清潔な生活環境の持続性を高める。お掃除ロボットを活用するにしても、他の部屋へと移動する必要がないため、スイッチ1つで住まい全体をきれいに保てるのだ。
区切りのない家というと、冷暖房の効率を心配する方が多いが、最初から「区切りのない家」を想定していれば、それに合った効率のよさを求めることができる。なにより、高齢者にリスクの高いヒートショックを回避できる点は大きいだろう。
区切りのない家は、高齢者にとって暮らしやすさだけでなく、健康寿命を延ばす理想的な環境ともいえるのかもしれない。
見通しのいい家で老後も明るくオープンな毎日
「区切りのない家」は、「見通しのいい家」と言い換えることもできる。この見通しのよさは、年齢を重ねていく中で起こりうる孤独感の解消に役立つだろう。
老後も明るく楽しい毎日を過ごしたい…。そんな思いを叶えるヒントがここにある。
高齢になって感じる孤独感
年齢を重ねる中で生じる体の変化は、体力だけではない。物が見えづらく、耳は遠くなるものだ。周囲の人と同じように話していても、聞こえにくいために理解が及ばず疎外感を覚えたり、同じものを同じように捉えることができなかったり…。そんな積み重ねは、高齢者の心に孤独感を生むことがある。
居心地のいいはずの我が家も、ドアや壁の仕切りがあると声の通りが悪く、得られる情報が少なくなるものだ。その結果、家族と同居していても、孤独を感じる瞬間があるという。さらに体力の低下もあれば、人に会ったり出かけたりするのも億劫になり、気持ちが塞ぎ込んでしまう方も少なくない。
高齢者の住まいは、心の健康にも配慮したものであって欲しい。悠々自適とまではいかなくても、老後で苦労しないためにそれまで頑張ってきたのだから。
区切りのない家は、心の健康面にも多くのメリットがある。
・耳が遠くなっても広い視界で情報を入手しやすい
・リビングから玄関までがつながっていて人との接触が増える
・寝起きが大変になっても近所付き合いを継続しやすい
目や耳が遠くなっても、視界が広ければ家族や来客の顔を見る機会が増えて疎外感は薄れるだろう。家族が対応している来客とも一緒に話したり、その様子を共有したりもできる。ベッドから寝起きするのが難しい体調の日も、声のよく通る区切りのない家ならば、声だけで見舞うこともできるのだ。
一般的な構造の平屋では、そうはいかない。見舞いをするには上がり込まないと難しい。上がり込むとなると手ぶらという訳にはいかないし、5分でさっと帰るのも気が引けだろう。気心知れた相手であっても、遠慮して足が遠のく可能性を否定できないのだ。
区切りをなくして心もオープンに
高齢者の住まいは、区切りのないオープンな空間にすると居心地のよさが格段に上がるのではないだろうか。昨今、近所の人でも「ちょっと上がっていかない?」と声をかけにくい。その点、区切りのない家は、玄関先に腰かけてもらっても十分な距離を保てる。土間などあれば最高だ。さらに立ち寄りやすい家になるだろう。
夫婦どちらかが寝たきりになっても、疎外感が少ない点も注目したい。風邪などで数日寝込むのとは違い、寝たきりという状態は心にも大きな影を落とす。テレビなどで気を紛らわすことはできても、やはり部屋に一人きりの時間が増えるのは寂しいだろう。区切りのない家は、そんな高齢者ならではの寂しさを解消できる点でもおすすめだ。
区切りのない平屋は介護の負担も減らす
老後の暮らしでは、介護のあり方についても考えておきたい。中でも、高齢者による高齢者の介護は、超高齢化社会の大きな課題の1つだ。
区切りのない住まいは互いの様子が把握しやすく、お世話の中で生じる手間やストレスの軽減も期待できる。閉鎖的になりがちな住居の中では、視線が通りやすくなることで、場合によっては、地域住民や行政からの助けも得られるかもしれない。
真面目で一生懸命に頑張る人ほど、悩みを抱え込んでしまうという。誰かに気付いてもらえる環境をつくる…。それは、未来の自分たちを助けることになるのかもしれない。
災害時はシンプルな動線が命をつなぐ
ここまで高齢者の生活の中に潜む、体と心を害するリスクについてフォーカスしてきたが、災害時ももちろん大きなリスクが生じる。スムーズな避難が可能であるかという問題だ。
普段から防災の備えはあっても、いざとなると思うように行動できないものだ。ならば「最悪は体一つで逃げ出せばいい」そう若いうちは思っていても、高齢になると思わぬ事態が生じる。
高齢者にとっての「避難」とは?
残念なことに、避難の遅れが原因と思われる形で亡くなられる方がいる。災害の危険な兆候はその前からあっても、速やかに避難するという選択ができなかったケースだ。
住まいの中にいると、漠然とした安心感がある。近年、自然災害の規模が大きくなっているが、不安感から外へ逃げ出すのを躊躇することもあるだろう。中でも高齢者場合は、避難場所での生活の不安も大きい。病や体調の不安を抱えている方はその傾向が強いだろう。
さらに、長年住んでいる家への愛着も避難を遅らせるという。周囲の声掛けなどでやっと避難を決断しても、若い世代と違いサッと飛び出すことなんてできない。そんな時に生死を分けるのが、住まいが避難しやすい環境であるかどうかだ。
普段の生活の中でつくる「避難しやすい家」
避難しやすい環境は、日頃から整えられていなければ意味がない。まずは、そのための条件を考えてみよう。
・各個室のドアが開かなくなるといったリスクがない
・住宅内の異変に早く気付ける
・真夜中でも外まで移動しやすい動線
・家族の居場所、安否が瞬時に確認できる
大地震では、ドアが歪んで開きにくくなることがある。若ければ勢いでどうにかできるかもしれないが、高齢になると難しい。玄関なら外に助けを求めることができても、奥の部屋では困難だ。
住宅内の火災であれば、異変に早く気付くことが命をつなぐ可能性は高い。避難の動線がシンプルにで、同居の家族の居場所や安否の確認が瞬時にできれば。それだけ避難が早くなる。
これらの条件を検討すると、やはり平屋で区切りのない家が理想的といえるだろう。
命をつなぐ「救助しやすい環境」
高齢になると自力での避難が難しいケースも出てくる。そんな時、行政や地域の方の助けを借りることとなる。その際も、やはり避難しやすい環境は重要だ。
設備が十分な団体に避難救助をしてもらう場合は、担架で運び出すこともあるだろう。区切りのない平屋であれば、ドアや通路の狭さがネックになる心配はいらない。医療機器の持ち出しが必要でも、比較的スムーズに進めることができるはずだ。
大きな災害の中での救助活動でも、区切りのない家は迅速な活動の助けになる。毎年のように想定を超える自然災害に見舞われるようになった今、「まさか」のできごとは決して他人ごとではない。最悪のケースに備えることが、自分と家族の笑顔を守ることにつながるのだ。
まとめ
誰もがいつか迎える老後の暮らし。そこからはじまる第二の人生が、それこそ本番とばかりに長くなっていく時代に突入した。
しかし、私たちはまだ暮らしの中のリスクに対して十分な備えができているとはいえないだろう。まずは、区切りのない平屋から。
早めに備えておけば、それだけ長く楽しい人生を謳歌できるのではないだろうか。